演技論シリーズ③「演技の下手な演出と、演技の下手な役者のアホ稽古」
攻めたタイトルです!さっそくいってみましょう!
の、前に「結局、演技力って何?」ってのを簡単に話しておきます。下手というからには上手いとはこういうことなのか、を話してからじゃないと、ですよね。
笑いや喜劇は難しいって良く言われますよね。僕もそう思ってます。ではなぜ難しいのか?笑いはシリアスな演技に比べて、表現する感情の種類を多く求められるからです。ツッコミ的なセリフってまず本気で怒ることが基本ですが、それだけでは不十分なセリフもあります。怒りながらイラついたり、オラついたり、困ったり、上からだったり、冷静だったりと、場面に合わせて色んな感情を織り交ぜないと成立しないセリフもあります。これが表現する感情の種類です。怒りながらイラつくだけなら誰でも出来そうな気がしますが、怒るとイラつきの度合いの調整が難しいのです。その他にも、間やテンポ、声量の調整、言葉の立て方、これらを完璧に表現することで笑えるセリフとなり、下手な役者にはこれが出来ないのです。
つまり、下手な役者には表現出来ない演技がある、ということです。
この「表現出来ない演技がある」というのがポイントです。下手な役者は表現出来ない演技があることを自覚していません。自覚出来ないのはそれを指摘して指導出来るコーチ(演出)がいないからです。演技が上手く出来ない理由は未熟な演技力以外にないのですが、それを認めようとせず他に理由を求めるのです。演技が下手な演出も「表現出来ない演技がある」ことを理解していません。過去の自分の下手な演技を「下手だったけど個性的だった」とか「下手だったけど迫力はあった」と下手だったことを個性的とか迫力でごまかし、肝心の下手だったことと向き合おうとしないのです。
では「表現出来ない演技がある」ことを理解していない演出と役者のアホ稽古、例にあげてみますね。
例①「台本の深い読み取り」
台本を深く読み取ればそのシーンの芝居が良くなると思い込んでいる演出がよくやるアホ稽古です。演出が「君は台本の読み取りが浅いんだよ」だとか「台本には書かれていないけど、この人物の過去や生まれ育ちを想像したことある?」だとか「台本には書かれてないけど、この人物は末っ子?長男?それによって演技は変わるんだよ」だとか「一度この人物の生まれ故郷を見てきたら芝居が深まると思うよ」・・・・深まりません!故郷を観に行っても末っ子か長男かを考えても芝居は深まらない!ま、敢えて言うならめちゃくちゃ演技力の高い役者ならそれらを必要とすることもあるかも知れない、でも極まれです。下手な役者には全く必要ない!そもそもシーンを成立させることも出来ない役者に故郷なんか観に行ってる暇はない!でも指導法を知らず「表現出来ない演技がある」ことを理解していない演技の下手な演出は、こういう抽象的というか文学的というか、つまりは「台本の深い読み取り」に逃げ込んで、こういうアホな指導をするのです。「表現出来ない演技がある」ことを理解していないので、深く台本読めば芝居が良くなると思い込んでるのです!台本を深く読み取るだけなら役者じゃなくても、日本人全員が出来るんです!みんな日本語知ってますから!
で、言われた演技の下手な役者も「そうか、台本には書かれてないけど人物の生まれ育ちは重要だな」と真に受け「そうか、台本には書かれてないけど末っ子か長男は重要だぞ」と真に受け「そうか、生まれ故郷を見てないから芝居に深みがなかったんだ」と真に受ける。で、役者が次の稽古で「今日の稽古どうでした?まだ生まれ故郷には行けてませんが、人物の生まれ育ちや、末っ子なのか長男なのか考えて芝居してみたんです」・・・・・・・この後、演出はなんて言うと思います?・・・・わかりますよね「良くなった」と言うしかないんです。自分が指導したことを役者がしているわけですから「良くなった!深まった!」と言うしかないんです。例え1ミリも芝居が変わっていなくても引くに引けない「良くなった!お前は深まった!」と言うしかないんです。この演出と役者、どっかで気づいてるんですよ、芝居が1ミリも変わってないことを。でもそれを見ようとしない、引くに引けませんから。挙げ句に故郷にまで行ってしまった役者が「実際に人物の生まれ故郷に行って町並みを見たら、家族構成、学生時代の部活や初恋の思い出なんかが見えて来ました」・・・・見えるわけない、見えるわけないですけど、故郷にまで行かれたら演出はさらに引くに引けない。演出「僕にも見えたよ。君の演技で人物の背景が見えたよ」見えるわけないのに!
・・・・・・・・・・これが表現出来ない演技があることを理解していない「演技の下手な演出と、演技の下手な役者のアホ稽古」例①・・・・・なのです。
腹立ちますよね、そう腹立つんです。そして・・・・例①だけでこんなにいっぱい書いてしまった。ま、面白く読んで頂くために多少の誇張はありますが・・・・
取りあえず今日はこの辺で。次回は例②かな・・・・なるべく早くアップしますね。
あ!左手のキーボード打ち、健康時の7割?うん、7割くらいに戻って来ました!ここに来て加速的復活!
例②!乞うご期待!
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